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毎年2月と7月の半年に1回、FRB議長はハンフリー・ホーキンズ法に基づき、議会証言を行う。相場を注視するなかで、どうしても読んでおく必要がある英文をあげよ、といわれるなら、この議会証言や、大学や各国の中央銀行を訪れた際に行われる、FRB議長のスピーチになるだろう。

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気鋭の経済アナリストが解きほぐす為替変動の深層(真相) 第6回:岩本沙弓
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■重要な文書は、可能な限り全文に目を通す

毎年2月と7月の半年に1回、FRB議長はハンフリー・ホーキンズ法に基づき、議会証言を行う。相場を注視するなかで、どうしても読んでおく必要がある英文をあげよ、といわれるなら、この議会証言や、大学や各国の中央銀行を訪れた際に行われる、FRB議長のスピーチになるだろう。これらはすべてFRBのホームページ上でアップデートされるので、誰でもすぐに手に入れることができる。

1990年代後半、IT銘柄がバブル化するのを指した「irrational turbulence」(根拠なき熱狂)、住宅市場が華やかな頃、米国の長期金利が上昇してこないことについての「conundrum」(謎)、そのときの米国経済を象徴する言葉は、実は、この議会証言で発せられている。2004年3月にグリーンスパン前議長が日銀への介入停止をスピーチで訴えると、その2週間後にはピタリとドル買い介入が止まるのである。

日本語訳などがロイター、ブルームバーグなど、各ベンダーでは取り上げられるものの、全文を取り上げているものはほとんどないだろう。重要な数行だけが抽出され、それをもとに記事が書かれることが多い。確かにそれで必要最低限の情報は得られるのだが、これでは全体に流れる雰囲気がつかみきれないということと、数行の翻訳のみとなると、記者の恣意的な解釈が反映されやすく、ときにはもっとも本質に迫る個所が抜け落ちてしまう、という問題が生じる。

部分和訳で得た情報以上のものが何もない場合もあるのだが、全文を通じて読んでみるという作業は、今のFRBのスタンスを知るうえで有用と考える。ほとんどの人が全文を読まない(たぶん、外国勢でも全文をきちんと読む人はいないのではないかと思う)ということで、意外とみんなが気づいていない情報やヒントを、いち早く見つける手立てになるというメリットもあるのだ。

しかしながら、読み慣れなければ非常に長く、グリーンスパンの時代は、前述したような難解な英語が飛び出してくるので、四苦八苦しながら読解しなければならないという難点がある。そこで、全文を読まずにポイントを抑えるために、複数の記事を並べて、どれがより原文に近いかを選んで読む、という手がある。

さて、最新の議会証言が7月21日に発表となったので、今回はこちらの内容について取り上げてみよう。全文の和訳を載せるほうが、私の解説などよりよっぽど役に立つと思われるのだが、スペースの都合でなかなかそういうわけにもいかないので、恣意的な解釈は避けつつ、ポイントとなりそうな箇所を取り上げるとともに、各ベンダーが指摘している点と、実際の内容にズレがないかどうかということに絞って話を進めさせていただくことにする。

■トピック・センテンスを読んで記事を探す

英文はなんでもそうなのだが、最初の1行目(ときに2行目あたりまでを含む)がTopic Sentence(表題文)と呼ばれる。英語の構造が主語、述語の順番でくるのが示すように、重要な情報は最初にくることが多い。ようは、文全体の内容が端的に現れるのがこのTopic Sentenceなので、こちらを取りあえずじっくり読む。

英文1

表題文をもとに、各ベンダーの見出しをつけ合わせ、取捨選択をする。たとえば、今回の場合、ロイターは「見通しは『異例に不透明』、必要に応じ追加措置」、ウォール・ストリート・ジャーナルは「バーナンキ米FRB議長、政策変更を示唆せず」となっている。

必要に応じて積極的に追加措置を取るのと、政策は現状維持、というのではやや受け取る側の印象も違ってくる。前者は、米国景気は異常な状態にあり、今すぐにでも景気が下振れしそうなイメージをもたされるが、後者であれば、そこまで差し迫った感じはしない。

表題文から察すると、ロイターがいうほどの緊迫感は感じられないので、ウォール・ストリート・ジャーナルのほうがバイアス・ニュートラルで読めそうだと目星をつける。

ところで、ロイターの『異例の不透明』はどこの部分からきたのかというと、

英文2

このgreater than normalを『異例』とするか、『通常よりも』にするかで、微妙にニュアンスは変わってくるが、つまり『異例』>『通常よりも』という関係が成り立つと思うのだが、原文に忠実であれば、『通常よりもかなり』となり、『異常』というまでには強くはない。ということで、ロイターはかなり米景気悪化方向に肩入れしているという印象である。

全体を通じて流れるニュアンスは、米景気について見通しは以前よりも弱まっているために、柔軟性は維持しつつ、最終的には、超緩和策から通常の状態に戻す準備もしている、ということである。その場合の金融政策について、

英文3

これからしばらく緩和政策は続けるのは間違いない。実際に緩和解除のシグナルとなるのは、現在0.25%に設定されている準備預金金利の変更ということになる(準備預金を引き上げた場合、しかも、他の市場で貸出が低迷していると、むしろ金利をつけてくれる準備預金にどっと資金が集まることとなり、市場での金利上昇を促す効果となるかどうかは疑問ではあるが)。

FRBが準備預金金利を触り始めれば、緩和解除のノロシということでよいだろう。しかし、2012年までインフレは低位安定ということであるから、そこまでは現状の緩和状態が継続。「ドル/円」のキャリーで稼げる時期も、向こう2年はこないということである。

■議会証言とプライス・アクション

バーナンキ議長が議会証言を始めたのは、東京時間でいうと、7月22日の午前3時過ぎ。その際の「ユーロ/ドル」のプライス・アクションは【図表1】の通りである。 議会証言が始まった段階でユーロ売りが加速しているが、これは下記の部分に反応したためである。

英文4

ユーロ危機に対しては、ECBや他の中央銀行との一時的なドル・スワップ・ラインを設置し、ドルの流動性を確保することで市場への安心感を与えてきたとするものの、ユーロ圏に対しては、かなりネガティブなコメントである。それに対して、市場は素直に反応して、ユーロ売りということになったわけだ(【図表1】のなかの矢印の時点が議会証言開始時間)。

図表1

しかし、一方で、これだけFRB議長がユーロに対して否定的なコメントを出しながらも、「ユーロ/ドル」が1.2750の水準にとどまり、すぐ議会証言以前の水準まで戻したというとらえ方もできる。

プライス・アクションからすると、ユーロ売りの材料に対して市場は反応が限定的になっていることから、ユーロ・ショート勢が辛くなってきていることがうかがえる。シカゴIMMの通貨ポジションの推移から、ユーロ・ショートが溜まり込んでいるといわれてきたと思うが、実際には、ピーク時の6月上旬からポジションは減りつつある。

過去数回に渡り、ギリシャ危機を通じてのユーロ売りはヘッジ・ファンド主導、よって彼らの利食いが終了すれば、急速な回復が見込まれるということを指摘してきた。順調に利食いは6月いっぱい進んでおり、そして、今回のプライス・アクションを見る限り、彼らがユーロ・ショートではもはや攻めていないといえるだろう。

6月10日付けのCNBCニュースで、ジム・ロジャースは、「Now May Be the Time to Buy the EURO」と発言している。全員があまりにもユーロに対してベア転し過ぎているので、単体のユーロを買うのにいい時期がきたのではないか、ということである。

彼がこのようなコメントを出し、しかも、反応が薄いということは、市場はまだユーロぺアのままである証拠なのだが、手元のチャートツールで確認いただければと思うが、6月10日はこのステージの「ユーロ/ドル」のほぼどん底である。

ピンポイントで動き出したということは、一般投資家が悲観に暮れて、気がつかないような状況のなかで、ライオン勢(=リアル・マネー)は密かにユーロ買いで動き始めたということだ。少々の値幅を期待して動く彼らではない、ということで、ここからは1年半で前回高値の1.6台を目指す展開と、個人的には考えている。

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