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- 海外投資の落とし穴~悪徳業者に気をつけろ~:鈴木雅光
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■不当に高いコストを要求する悪徳業者
過日、ある海外ファンドを紹介している仲介業者主催のセミナーに参加した。会場に集まっている人は20名くらい。30代から60代超まで、年齢層もまちまちである。皆、一所懸命にメモを取りながら、話を聞いていた。要は、海外で設立・運用するファンドの紹介とともに、会員になれば優先的に、そのファンドを購入する権利が得られるというのが、このセミナーの売りだ。日本は財政破綻寸前であり、今こそ海外に資産をもちださなければ、大事な自分の財産が危機にさらされるという。
今、日本国内でこの手のセミナーが頻繁に開催されている。具体的な内容は次のようなものだ。
(1)日本国内のセミナー会場で説明会が行われる。ここでは、いかに日本の財政状況が危険であり、日本に財産を置いておくと、将来没収される恐れがある、といった話が行われる。そして、最後に香港など海外で購入できるファンドの説明が行われる。そのファンドは、年10%近いリターンが得られるという優れモノだ。
(2)この魅力的なファンドを購入するためには、このセミナーを主催している会(通常「海外投資の会」といったサークルがある)の会員になる必要がある。そして、会員になると優先的にさまざまな投資情報が送られてくるのだという。
(3)会員になり、実際に海外ファンドを購入するとなったら、実際に海外に口座を開設するためのツアーが定期的に開催されているので、それに参加する。
(4)香港ではあらかじめセッティングされている複数の証券会社、運用会社の見学ツアーに参加。そして、香港の銀行などに口座を開設するための手続きを行う。
こうして目出度く、海外ファンドの購入者になれるというわけだが、問題は、「悪徳」と思われる業者の手にかかると、こうしたプロセス、あるいはファンドを保有している間に、多額の手数料を課せられる恐れがあるということだ。しかも、これらの手数料は本来、海外ファンドを購入・保有するうえで、ほとんど必要としないものばかりである。海外ファンドを買うといっても、日本人にとってはなかなかハードルが高い。口座を開設するにしても、英語で申し込む必要があるので、まず、語学力で引っかかってしまう。逆に仲介業者からすれば、「諸々の手続きを代行してあげるので、その分、コストをいただきます」という口実になる。
実際、どのくらいのコストを取られるのか。これは、いわゆる「悪徳」と思われる仲介業者が提示している手数料だ。
・海外口座開設ツアー = 30万円。
・入会金 = 5~10万円。
・口座管理料 = 預り資産の1%。
・ファンドのスイッチング手数料 = 2~5万円。
・ファンドのキャンセル手数料 = 2万円。
これらに加えて、悪徳業者のなかには「成功報酬」と称して、1年間の運用で収益が得られた場合、その収益の20%を上記のコストとは別に徴収するところもある。果たして、これだけのコストが本当に必要なのか。実は、必要ないのである。海外ファンドを購入する場合、香港金融庁の免許を取得しているIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)を介して購入するのが一般的な方法だ。もちろん、IFAに対しては、年間の口座管理料を支払うことになるが、これがだいたい年1%前後。この他、海外に送金する場合の送金手数料や、ファンドの運用報酬などが必要になるが、仲介する会社に対して支払うのは、基本的に上記の年1%のみである。
自分で香港のIFAと連絡を取り、自分で航空券などを取って香港にいけば、上記の海外口座開設ツアーで取られる30万円ものお金も必要ないということになる。当然、入会金も必要なければ、ファンドのスイッチング手数料、キャンセル手数料なども請求されることはない。つまり、海外ファンドの悪徳業者は、前記のようなコストをどんどん課すことによって、不当に高い収益を得ているといえるだろう。
■長期積立を勧められたらご用心
さて、こうした悪徳業者がよく勧めてくるのが、長期の積立だ。確かに、この手の運用商品は、長期で積み立てることによって、高い投資効果を得ることができるといわれている。それは、ドルコスト平均効果が得られることと、目先、大きく値下がりしたとしても、長期で保有することができれば時間を味方につけることができ、再びマーケットが上昇して、損失を取り戻せる機会に恵まれるからだ。
ドルコスト平均効果というのは、毎月、等金額で投資することによって、購入単価を平均化するという投資法のことだ。たとえば、投資しているファンドの価格が高いときには、それだけ購入口数が少なく、価格が安いときには購入口数が多くなる。結果、長期で等金額の積立を続けていくと、相対的に高値で購入する口数が少なくなり、平均した購入単価が下がっていく。
また、一度にまとまった金額で投資しようとすると、購入タイミングが難しくなる。基本的に価格が安いときを狙って、まとまった資金を投入するのが理想だが、どこが安値なのかということは、誰にもわからない。どのみち安値を上手にとらえるのが難しいのであれば、毎月積み立てることによって、購入タイミングを間違えるというリスクを分散させることができる。
ただ、長期積立が望ましいとはいっても、それを始める年齢にもよるだろう。20代、30代の人が、25年、30年という長期の積立を行うことには、それなりの意味があると思う。
しかし、60代の人になると話は別だ。仮に、60歳から25年の積立を始めたりしたら、積立期間が終了したときの年齢は85歳。果たして、生きているだろうか。生きているとしても、そこで得たお金を使って世界中を旅行したり、おいしいものを食べにいったりするだけの体力が残されているだろうか。現実を考えると、それはなかなか難しいだろう。悪徳業者と思わしき仲介業者は、こうした高齢者に対しても、25年、あるいは30年という長期の積立を勧めてくるケースが多い。なぜなら、毎月の積立金額を大きく、かつ積立期間を長期にして顧客に販売するほど、自分のところに落ちるバックマージンの額が大きくなるからだ。
しかし、それは決して顧客にとって賢明な選択とはいえない。とくに、高齢者の方で、この手の海外投資を始めようとしている人は、積立期間の設定に十分注意する必要がある。他にも、長期積立には落とし穴がある。たとえば、25年積立を選んだとしよう。あなたが仲介を頼んだ会社は、果たしてこれから25年間も、存続しているのだろうか。もちろん、きちっとした金融機関であれば、たとえ積立期間が30年間あったとしても、十分に存続している可能性がある。しかし、海外ファンドの仲介業務を行っている会社は、お世辞にもこうした優良な金融機関とはいえない。
いや、金融機関ですらない。なかには税理士事務所が片手間にこの手の仲介ビジネスを行っているケースもあるし、何が本業かわからないような、独立系の運用アドバイス会社もある。なかには、1人で運営しているような個人事務所もある。つまり、この手の仲介業者は、財務面で極めて脆弱であり、今後25年、30年という長期にわたって運用アドバイスが得られるかどうか、何ともいえないのである。場合によっては、仲介業者がいつの間にか廃業しているというケースも十分に考えられる。もし、自分が利用している仲介業者が廃業などということになったら、どうなるだろうか。
一番怖いのは、とにかくすべての手続きを仲介業者に委託してしまっている場合だ。下手をすると、自分がもっているファンドが、どこの運用会社によって運用されているのかすらわからないというケースも起りうる。そこまでひどいケースは稀だとしても、この手の仲介業者を利用している人は、自分でもろもろの手続きをすることができないからこそ、仲介業者に高いコストを支払って御願いしているのがふつうだ。ということは、仲介業者が廃業してしまったら、現地とのアクセスが極めて困難な状況に陥ることになる。運用期間が満了となり、現金を引き出したいと思っても、すべての手続きを仲介業者任せにしている場合は、現金の引き出しや、ファンドのスイッチングなどの手続きが、すべて滞ることになる恐れが浮上してくるのだ。
■これからも増える海外投資詐欺
海外ファンドの仲介ビジネスについては、決して「詐欺」と断定することはできない。仲介業者を通じて販売されている海外ファンドは実在するものであり、実際、顧客が支払ったお金は、海外ファンドの購入代金になっているからだ。ただ、問題は不当に高いコストである。
ただ、本当の詐欺に遭うというケースもある。つまり、購入したはずの海外ファンドは架空のファンドであり、適当につくられた偽者の運用報告書が送り届けられているというケースだ。
かつて、実際にこの手の海外ファンド詐欺が横行したことがある。今から10年ほど前の話だ。具体名を挙げると、「エンジェルファンドネットワーク」「スイスプライベートファンド」「G&G」といった海外ファンドがそれだ。いずれも高い運用利回りを提示して、個人投資家から100億円近い資金を巻き上げた。海外ファンドは、その存在を日本国内で調べる方法が限られている。本当に存在しているのかどうかがわからないけれども、わざわざ現地までいって調べる手間もお金ももったいない。ということで、悪徳業者からいわれるがままに買っているというケースが、被害者のなかに多く見られる。
そして、これからもこの手の海外投資詐欺は増え続けるだろう。何しろ、日本の財政赤字問題は年々深刻の度合いを増しており、これが海外投資を勧める絶好の口実(セールスポイント)になるからだ。この手の悪徳業者は、人々の弱みにつけこんで、巧みに近づいてくる。この手の詐欺的な悪徳業者に引っかかったら、老後資金を増やすどころか、すべての財産をもっていかれてしまう。たとえ詐欺が発覚して首謀者が逮捕、財産を差し押さえて被害者に分配を行おうとしても、すでに大半の財産は何らかのかたちで補足できなくなっているか、使い込まれているケースが多い。つまり、ほとんどのお金は戻ってこないと思ったほうが良い。だから、何よりも大事なことは、この手の悪徳業者の口車に乗せられないようにすることだ。
まず、常識的に考えてあまりにも有利な条件が提示されていたら、疑ってかかること。元本確保のうえ、年5%といった利回りが提示されているような商品は、詐欺的商品と考えて間違いない。広告塔の存在にも注意したほうが良いだろう。若干、落ち目のタレントなどを使って、信用力を補完しようというケースが見られるからだ。そして、何よりも大事なことは、信用力のある業者から購入することだ。海外ファンドであれば、きちっと海外の所轄のライセンスをもっている人から購入する。海外ファンドの多くは香港拠点のものが多いが、香港には現在数名ほど、日本人で香港金融庁のライセンスをもっているIFAがいる。たとえば、香港資本のTGホルボーンという金融グループなどは、日本人のIFAを在籍させ、日本人向けの口座開設サービスなどを展開している。下手な国内の仲介業者に口座開設の依頼をするくらいなら、こうした香港のIFAと直接取引したほうが、コスト的にも有利だし、何よりも安心できる。
自分の大事なお金を運用するのだから、少々の手間に煩わされることなく、きちっとした業者(パートナー)を探すことから始めてみてはどうだろうか。

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