私は最近、アップル製品づいている。私のパソコン使用歴はもうすでに25年を超えているが、従兄弟がもっていたシャープ製の日本初のパソコンであるMZ-80Kを触ったとき以来の衝撃を受けたのが、15年くらい前に触ったアップル製のPower Macだった。
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■Power Macに触れたときの衝撃
私は最近、アップル製品づいている。私のパソコン使用歴はもうすでに25年を超えているが、従兄弟がもっていたシャープ製の日本初のパソコンであるMZ-80Kを触ったとき以来の衝撃を受けたのが、15年くらい前に触ったアップル製のPower Macだった。
それがきっかけで、コンピュータ関係の仕事、ひいては前職のネット関係の仕事をすることに繋がっている。それまでのパソコンは、真っ黒い画面にキーボードでコマンドを打たないと使えなかったが、Macはそんなものはいっさいなし。モニター画面にあるのは、机の上を模したデスクトップがあるだけ。すべての使い勝手が実際のオフィスをイメージしている。これは直感的に使えるなあ、と感心したものだ。
コンピュータはこれまでのマニアだけのものではなく、ふつうの人がふつうに使えるツールに遂になるのだなあと思ったことが、この仕事をするきっかけになっている。
そういう記念すべき製品をつくった会社がアップルだった。しかし、創業者のスティーブ・ジョブスはすでにアップル社にはいなかった。
■ジョブスがいなくなったあとのアップルの惨状
誤解している人が日本にはとくに多いのだが、すでに上場していたアップルにおける創業者の株式シェアは、オーナーとはいえないくらいに低い。会社の経営は多くの株主から委託を受けた取締役が行うことが徹底され、皮肉にも創業者であるジョブス自身が招聘したジョン・スカリーと衝突してしまい、ジョブスのほうが解任されてしまったのだ。
ジョン・スカリーは、その後、彼を解任したことを悔やんでいるそうだが、解任後のアップルはそれはひどいものだった。先進的な製品だったMacのデザインやOSのできは悪くなるばかり。そのうち私は、レガシーな製品として愛想をつかしていたMS-DOSの製造元であったマイクロソフトが、Mac OSによく似た製品であるWindows 95をリリースする。
しかも、そのOSはMacに似ているだけでなく、アップル製品よりずっと安いIBM/PC互換機で動いたし、MS-DOSで動いているソフトも使うことができた。私はすでにその頃、アップル製品に心酔していたので、Windows 95のよさはさっぱりわからなかったが、瞬く間に普及し、仕事のうえでの制約が出てきたのと(なんせWindows 95だけでなく、その上で動くブラウザのInternet Explorerまで普及してきたので、ウェブ商売をしている私としてはチェックが必要になったりしたのだ)、持ち運びに適した小型パソコンを、当時のアップルはつくらなかったので、出張や出先での仕事が多い私は、小型のノートパソコンを求めていたのだ。
実は皮肉にも我慢できなくなって、ジョブスが復帰直後にMac OS-Xが発売された後に、Windows 98搭載のノートパソコン、SONYのVAIOに鞍替えしてしまった。OS-Xの初期は非常に使い勝手が悪かったからだ。それからずっとアップル製品は使っていなかった。
■株価が最低だったアップル
実は、ジョブスが復帰したときにいろいろな手が打たれていた。当時、パソコン用OSの主流はプリエンティティブ・マルチタスクをサポートするのが当然となっていたが、Mac OSはヴァージョン9まではマルチタスクに対応していなかったのだ。
しかし、彼が復帰したときに経営していたNeXT Computer社をアップルに買わせていた。そこの主力OSにMacの名前を冠してMac OS-Xにしたのだった。あまり知られていないが、アップルを追い出された後のジョブスがつくった会社のひとつがNeXTだった。
当時のプロセッサースピードでは、結局、満足には動かなかったが、UNIXベースのマルチタスクで動くこのOSは、今では当たり前のアウトラインフォントなどをサポートし、非常に先進的なOSだった。
マルチタスクに対応できてなかったアップルにとっては渡りに船だった。同時に、ジョブスがとった奇策が、マイクロソフトによるアップルへの出資と最新版のMicrosoft OfficeのMac OSへの対応だった。
こちらもあまり知られていないが、マイクロソフトの主力製品Officeの一部である表計算ソフトExcelの最初のヴァージョンは、Mac OS向けに提供されている。お互い旧知の仲だったわけだが、当時のアップルの株価は最低だった。
Mac OSはボロボロで、パソコンもWindows対応機種に追われて下がるばかり。そこで底値のアップル株は上がるしかないわけだ。ジョブスはよほど経営手腕に自信があったのだろう。マイクロソフトにも応援を頼み、株価をあげるべく奮闘する。彼の報酬も現金は1ドルで、後は全部ストックオプションだった。果たしてアップルは不死鳥のように蘇った。
■「i」を新しいブランドにマーケット制覇へ
まずは、ジャブを打つようにデザイン性に優れて低価格なパソコンiMacをインターネット初心者に向けて発売する。そう、この段階から「i」をMacに続く新しいアップルのブランドにしようとしている。案の定、大ヒットしているうちに次の手を打つ。アップルが初めて成功させたコンシューマー向けの製品ともいえる「iPod」である。
ハードディスクを搭載し、専用のネットECサイト「iTunes」からダウンロードできたり、自分のCDをリッピングして入れることができる、この革命的でお洒落な製品は、爆発的ヒットとなった。
ここがアップルのうまいところであるが、デザイン性に優れているため、サードパーティ製のアクセサリーが大量にでた。たとえば、車載にするためのアクセサリーなどiPodが標準になっている。
このようなアクセサリーがたくさん出ることで、他社の追随する商品はいくら優れていても、不利になってしまう。
実は、私はこの段階でもSONY製のネットワーク・ウォークマンを使っていたのだが、iPodよりも使い勝手もいいし、電池ももつし、コンパクトなのに、アクセサリーの接続性のせいで不便な思いをすることが多かったものだ。そして、満を持してのiPhoneの発売である。
もちろん、最初のヴァージョンだったGSM版の使い勝手は悪かった。日本では使えなかったのもあるが、それが3GSになったら相当に解決されていた。アプリのダウンロードは簡単だし、なにより便利なアプリが山のようにある。立ち上がりが早いのでストレスもない。
それはジョブスのコダワリだった。グラフィックスの性能を上げればユーザーのイライラは少なくなる。これまで何度も失敗を重ねてきたからこその知験であり、他のスマートフォンと一線を画するポイントである。
これで電話とゲームとモバイル・コンピューティングという非常に大きなマーケットの覇者になりつつあるのが、今のアップルである。
■市場は完全にアップルに傾く
実は、こういった製品の開発の影で、主力のパソコンのほうでも進化がはじまっている。そもそもUNIXという非常にシンプルで安定しているOSをベースにしているMacOSは、Windows 95以降、まるで古い温泉旅館のように建て増しを重ねているWindows OSよりも、スピードも使い勝手も格段に良くなっていることに気づいた。
そして、私がマックユーザーを離れるきっかけになった小型のノートパソコンも良いのができている。そうこうしているうちになんと、マイクロソフトの時価総額をアップルのそれが上回ってしまったというニュースが飛び込んできた。
2000年代初頭、瀕死の状態だったアップル株に出資をしたマイクロソフトと完全に立場が逆転してしまったわけだ。当時のマイクロソフト社長であったビルゲイツはすでに会社にはいなく、アップルの創業者であるジョブスが第一線で活躍しているとは皮肉なものである。
しかし、市場は完全にアップルのほうが成長すると見なしているわけだ。その急先鋒となるのが、先頃発売された電子書籍などの本命のデバイスといわているiPadである。実は、私この原稿はiPadで書いているのだ。しかも、キーボードはアップル製のBluetoothキーボードである。
以前はMacを使っていたこともあり、馴染みが良い。日本語変換システムは相変わらず性能が悪いのが玉にキズだが。iPodで音楽の世界を盗り、iPhoneでモバイル・コンピューティングと携帯ゲームと電話機を盗り、そして、iPadで書籍の世界まで牛耳ろうとしているアップルの今の勢いは衰えを見せない。
■ユーザーにストレスを感じさせないiPhoneシリーズ
そして、最新の端末iPhone4が発売された。バッテリーのもちが良くなり、液晶画面は3倍の細かさになり、待望のマルチタスクがサポートされている。
よくいわれることだが、Googleの提供するAndroid搭載端末とiPhoneはいつも比較される。恐らく一般の人たちはそこに、かつてのマイクロソフト対アップルのOS競争のデジャブをみているのだと思う。
しかし、それはデジャブではないと私は思う。Windows 95が受け入れられたのは、まず第一に、それがパソコン用のOSであったことだ。パソコン用OSは多少使い勝手が悪くても、使うユーザーがそれを理解しているので大きなトラブルにはならない。
しかし、スマートフォンは電話機として認知されている。直感的に使えないとすぐにトラブルになるだろう。ハードウェアとソフトウェアを一体開発しているアップルは、以前のOS競争のときはそれが仇になってしまったが、今回はそれがプラスに働いている。次に、AndroidはWindows 95にとってのMS-DOSのように継承すべき資産をもたない。つまり、すべてが新規ユーザであり、ユーザーは前のソフトを継続して使いたい、メーカーは簡単に移植をしたいなどのモチベーションがAndroidの場合にはないのである。
そして、第一と関わることだが、iPhoneは立ち上がりや操作性を向上させるために、専用のアーキテクチャーをハードウェア側に用意している。そのため、プロセッサーの処理速度は省電力のためにあまり高くないが、表示だけは早いので、ユーザーにストレスを感じさせないのだ。
つまり、世間が思っているようにiPhone vs Androidのような図式は成立しないはずだ。もちろん、世界の携帯電話機製作メーカーにアップルがiPhone OSをライセンスすることはないだろうから、販売台数でいうと50%もシェアを取ることはありえないだろう。
■アップルの大きな収益源iTunes StoreとApp Store
かつてのマイクロソフトのWindowsのようなシェアはとりようもない。しかし、それは台数だけのシェアの話。実はもっと大きな収益源が隠されている。それはiTunes Storeであり、App Storeである。そこで売られるソフトウェアなどへのアップルの課金率は、なんと30%である。それを揶揄して、アップル税とよぶ向きもあるが、まるで消費税を取るかのように、ソフトウェアが売れる度にアップルに使用料が入ってくるのは、かつてのXeroxのコピー機モデルを思わせる。
これも一般の人はなんのことやらわからないだろうが、コピー機は売って終わりではなく、トナー代や用紙代を定期的にメーカーへ上納する仕組みになっている。コピー機はリースで、トナー代や用紙は専用のものを購入させて、そこのマージンで儲ける仕組みになっているのだ。
GoogleはAndroidを無償で提供しているために、どんなに使われようが少しも収入は入ってこない。彼らは彼らのサービスである検索エンジンなどを使ってもらい、そこの広告をクリックしてもらって初めて収入を得られるのだ。そこが大きな違いで、しかも、アップルはそれをサードパーティのデベロッパと共有している。自分たちは審査するだけで、つくるのは赤の他人だ。つまり、他人の褌で相撲を取っているわけだ。
それがたとえば、せいぜい20%の世界シェアだったとしても、音楽・書籍・映像・ゲームなどの巨大市場ですべて押さえられたとしたら、想像しただけでも相当な収入となることは間違いない。
■アップルは21世紀に何を生み出すのか
その一番のポイントは決済の容易さである。ジョブスはそんな簡単なポイントひとつに絞っているのだ。携帯キャリアとの契約で、そこを強固に縛って自分たちの収入にしているのだ。ユーザーインターフェイスを知り尽くしているジョブスならではといえるだろう。
そんな往年のXeroxのビジネスモデルをさらにヴァージョンアップさせたともいえるアップル。その躍進の最初のきっかけになったMacのアイディアの基になったのは、他ならぬXeroxのパロアルト研究所で研究員だったアランケイの開発したAltoであり、Dynabookの構想であった。
当時、コピー機のサプライ収益でぼろ儲けしていたXeroxは、未来のビジネスモデル確立のために巨額の研究開発投資をしていた。結果として、本業に役立つことはあまりなかったが、アップルという革新的会社を生み出した。アップルはその膨大な利益を基にして、21世紀に何を生み出すのだろうか?そちらも楽しみである。

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