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2012.2月号

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今回は、テクニカル分析の特集です。林康史さんは、立正大学経済学部教授ですが、20年以上も前に為替

相場の学び方 その6:林康史
相場の学び方 その6:林康史

今回は、テクニカル分析の特集です。林康史さんは、立正大学経済学部教授ですが、20年以上も前に為替ディーラーになると同時に、テクニカル分析の勉強をはじめ、官公庁等で講義したり、外郭団体のテクニカル分析のコメントの執筆を担当されていました。テクニカル分析の百科全書派ともいえるほど造詣も深く、また、実践もしてこられました。「概説外国為替のテクニカル分析」は、国際金融の823号(1989年4月15日)から877号(1991年12月15日)まで、連載は何十万字にも及び、ローソク足や移動平均からDMI、一目均衡表、さらには、アストトロジーまでを詳細に検討していて、現在でも、そのコピー版を求める人が多いといわれているほどです。

■技法の話の前に何を当てるのか

連載の最初に、相場を学ぶということは、①仕組み・相場予測、②心理、③仕方(運用ルール)の3つの柱を学ぶことが大切だと述べました(仕組み・相場予測、心理、仕方の冒頭のローマ字表記を取って、3つのSと呼ぶときもあります)。月刊「FX攻略.com」6月号では心理を、7月号では模擬取引を通じて相場の仕組みをお話しました。今回は、相場予測の部分、テクニカル分析について話したいと思います。 テクニカル分析については、私自身、何度も書いてきて、実は、私の最初の相場の本『円・ドル相場の変動を読む』(1991年)にはテクニカル分析についての考え方を述べました。また、『相場としての外国為替』(1993年)では、テクニカル分析のハンドブックとなるように、第6章を技法の便覧に当てていますし、日経ビジネス人文庫、等々にも収まっています。それを読んでいただくのが一番手っ取り早いと思いますが、今回、改めてテクニカル分析について書いておきたいと思います。

というのも、「努力は裏切らない」とはいいますが、それは「正しい努力は裏切らない」のであって、間違った努力をしている人が結構いるからです。まったく本を書くようなレベルにない人がテクニカルの本を出したりしています。そうした本を読んだからといって、理解が進まないのは当然でもあります。ものごとを勉強するには、正しい考え方に基づいた勉強の仕方が大事なのです。 たとえば、「ドル/円」の今後について、「どこまでいきますか?」と聞かれたら、何と答えますか? 「××円くらいまで」と答えた人は、もう一度、基礎固めからやり直したほうがいいのかもしれません。

相場の予測というと、たいていの人は、価格についての話だと思うようです。私も「どこまで上がりますか?」「どこまで下がりますか?」という質問を受けることが多いのですが、この質問は、相場予測の結果について半分しか尋ねていません。 相場を予測するというのは、「時間と価格」の両方が当たってはじめて、当たったといえるのですが、たいていの人は、価格に対する関心が強すぎて、時間については二の次のようなのです。「どこまでいきますか?」との質問には、「×月ごろまで」「××円くらいまで」と答えないと、きっちりと答えたことにはならないのです。

たとえば、ある人がドルは100円まで上がるといった1週間後に、ドルが100円まで達したとします。この予測は当たったといえるでしょうか? もし、その人が1年ぐらい後に100円まで上がると思っていたら、その予測は正しいものとはいえません。 テクニカル分析の分野で知られた、ギャンやエリオット、一目山人といった人たちは、いずれも"時間"の分析の大切さを説いています。ギャンは、旧約聖書のコヘレトの言葉の一節「すべてのわざにときあり」を引いていますが、この言葉は、相場参加者としても憶えておきたい言葉だと思います。

■予測技法の分類

テクニカル分析の解説に入る前に、予測手法全般の話にも触れておきましょう。 相場予測の手法は、何かをあとづけて考えていく投影法と、別の事象から発想する類推(推計)法に大別されます。 たいてい私たちが行っている相場の予測は、テクニカル分析、ファンダメンタル分析ともに、投影法に属します。この投影法は、さらに、タイム・シリーズ法とコ・リレーション法に分類され、テクニカル分析のほとんどは、投影法、とくに、タイム・シリーズ法と考えていいでしょう(図表1、図表2、コラム参照)。

図1
図2

■予測手法の方法論

ここで、テクニカル分析・ファンダメンタル分析の別なく、予測の手法にはどのようなものがあるのかを簡単に述べておきたい。予測手法を大別して、われわれが行っている予測がどういう種類のものかを知っておくことは予測の一助となると考える。片寄らない予測のためには、自分がどんな手法に基づいて予測したのか、知っておく必要がある。そうでなければ、頭から信じるか無視するということになりかねないし、予測手法全体を俯瞰できれば、自己の予測の弱点も補強できようというものだ。

予測手法の方法にはさまざまなものが考えられる。何らかのシグナルを読む、背景を考える、他にも、相関関係、歴史や循環、パターン、シナリオ・ライティング、趨勢、デルファイ法、いろいろある。さらに、アクシデントの可能性も考えねばならない。 イギリスの哲学者カーライルの言葉に「経験は最良の師である。しかし、その授業料は高い」というのがある。予測は経験を積まねばならない事柄でもあるが、経験なぞないほうがよいこともある。プラザ合意後のドル暴落の現場に居合わせたディーラーはドル売りに傾きやすい。そんな時代を経験していないディーラーのほうが現在ではパフォーマンスがよかったりもする。そういう意味では本当に経験とは難しいものだという気もする。 もちろん、ビギナーズ・ラックといえることかもしれないけれども、先入観がないということが有利に働くこともある。ものごとが単純に考えられるからである。

勘がいいということも重要だ。勘というと聞こえはよくないかもしれないが、各自、経験や論理をシステマティックに駆使して到達した瞬間の総合判断がそれだともいえる。 少し体系的にまとめておこう。個別の特定指標を見る方法、計量モデル、段階的接近法(仮説値からはじめて計算を繰り返し、シミュレートする方法)、サーベイ・データによる方法(他者の意見を収集する方法)等にわけて説明したものもあるが、ここでは基本的発想の違いで区分したい。 予測手法というのは、概ね三つにわけられる。投影法、類推法、計量法である。 投影法とは、読んで字のごとく、何かを将来に投影させていくという方法。類推法は、これも文字通りAという事象からBという事象を類推する方法。計量法は、たとえば、いくつもの方程式をつくって解くことだと考えていただければいい。この三つをさらに細分化すると、次のようにわけられる。

①投影法 ー タイム・シリーズ法、コ・リレーション法
②類推法 ー クロス・セクション法、メルクマール法、デルファイ法
③計量法 ー エコノメトリック法、リニア・プログラミング法
たいてい、われわれが行っている相場の予測はテクニカル分析、ファンダメンタル分析ともに①の投影法ということができる。 投影法のなかのタイム・シリーズ法というのがわれわれがもっとも日常的に行っている予測手法だろう。回帰線を考えて将来を想定していくものである。

コ・リレーション法は因果関係を見ていくもの。たとえば、過去の貿易収支が為替に影響を与えてきたので、貿易収支を見ていくと今後の為替動向を予測できる、というのがコ・リレーションだ。天体の運行に原因を求める占星術などもこの範疇に入る。ただ、人類が知っている因果関係はごく一部分でしかなく、わかっていないことのほうが多いのである。 類推法のひとつがクロス・セクション法。たとえば、アメリカで平均年収がこのくらいになったときにカラー・テレビがどのくらいまで普及した、だから、日本の平均年収が同じレベルになったらカラー・テレビが同じくらいまで普及する可能性があると考える方法である。 メルクマール法は現在のデータのなかの先行指標を読み込んでいく方法で、景気予測などでよく使われる。

デルファイ法はアンケート調査を繰り返しながらそれを煮詰めていくことによってどうなるかを予測する。しかし、相場予測では集約された意見のようにはならないと結論づけることが多い。ポジションの関係があるからであろう。この手法はコントラリー・オピニオンと呼ばれる。 エコノメトリック法は、大がかりな方程式を解くもの。コ・リレーションの大仕掛けなものと理解すれば投影法に含めることができる。エコノメトリック法のメリットは紙の上でシミュレーションができることであるが、そのことが却って経済学的な構造把握を困難にしたという批判もある。また、「ではあったが」という状況、つまり、トレンド変化には脆い。

リニア・プログラミング法というのは、シナリオ・ライティングといってもいいかもしれない。どうなるかというより、どうするかを考える方法で、戦略とかゲーム理論とか呼べるものだ。 自分がやろうとしていたのはどういう手法なのかを理解し、違う手法でも考えるのは知的な遊びでもある。

■テクニカル分析の基本的な発想

【図表3】は、ある小学校の年度別の生徒数のグラフです。

図2

このグラフを見て、来年度の生徒数を予想してみてください。「わからない」というのもひとつの答えだと思います。しかし、無理にでも答えるとすれば、多くの人が棒グラフの頂点を結んでいって、来年度も同様のペースで生徒数は増えそうだと答えるでしょう。 これは、グラフの頂点の変化、あるいは、接線の傾き具合を読みとっているといえます。さらに注意して見ていくと、まだ伸びが続いている時点でも、トレンドの方向性は変わっていないものの、伸びに勢いがない、ということも見てとることができるのです。このように、過去の時系列から将来を予測する方法がタイム・シリーズ法です。 人間は、常に「なぜ」という理由を知りたがります。その理由を探すのがファンダメンタル分析であり、理由探しはやめて、グラフを見て判断しようというのがテクニカル分析の基本的な考え方です。テクニカル分析で何かわかるのかという意見もありますが、そうした意見は、私たちが日常的に行っている方法をよくわかっていない意見だと思います。

■テクニカル分析の定義

さて、ここでテクニカル分析の定義について述べておきましょう。もっともシンプルに定義すれば、「過去の時間と価格」から「将来の時間と価格」を(分析し)予測することです。 時間と価格、この両方を当てるのが予測だといいましたが、その「時間と価格」の過去のデータに拠って考えるのがテクニカル分析です。 分析対象として、「時間と価格」以外に、「出来高」や「取組高」をあげる人もいます。そうした考え方もわからなくはありませんが、「時間と価格」を予測するのに、「時間と価格」しか使わないという定義のほうが、立場が明確になると思います。 というのも、ファンダメンタル分析は、「出来高」や「取組高」にはじまって、「時間と価格」以外のさまざまなデータ(外国為替では、経常収支だったり購買力平価だったり、雇用統計だったりするわけです)を用いて予測するというのが基本のスタンスなわけです(その意味では、占星術などの占術は、テクニカル分析的な技法というよりも、発想自体はファンダメンタル分析的であるといえます)。

バートン・マルキールが『ウォール街のランダム・ウォーカー』のなかで行っているテクニカル分析批判は、ピントのぼけた批判だということです。彼の批判は、まったくテクニカル分析の批判になってはおらず、おかしなファンダメンタル分析を批判したのにすぎないのですが、そのことにすら気づいていないのです。 もちろん、おかしなファンダメンタル分析があるのと同様に、おかしなテクニカル分析も存在します。自分の使っている技法の意味もわからないで使っているというのであれば、心もとありません。

■テクニカル分析のメリット

テクニカル分析における最大のメリットは、デンジャー・ポイントが把握できることでしょう。つまり、クリティカルな価格(実は「時間」もそうなのですが)を予備的に知っておけるということです。 よく「テクニカル分析は当たるのですか?」という質問を受けることがありますが、「ファンダメンタル分析は当たるのですか?」という質問はほとんど皆無です。これはテクニカル分析が時間と価格を具体的に提示できるからこその疑問ともいえます。たとえば、ファンダメンタルズに基づいてドル買いのポジションをもった後に、新しい材料が出ていないにもかかわらず、ドルが下がりはじめた場合、ファンダメンタル分析ではどうしたらよいのでしょうか。

損切る理由がありませんから、どうしてよいかわからなくなります。その点、××円まできたからポジションを変更するというのは、テクニカル分析の基本的な使い方であり、十分な方針転換の理由になります。 ついでながら、相場参加者はただでさえプレッシャーに晒されています。ファンダメンタル分析にのみ基づいている人は、夜も眠れなくなってしまいます。テクニカル分析だと、心理的にもストレスから解放されるというのもメリットでしょう。 ファンダメンタル分析でも同様ですが、相場で大事なことは、「状況はどうか」の事実を客観的に見ることです。テクニカル分析は、その点でも優れています。

ファンダメンタル分析では、どうしても「どうあるべき」と考えてしまいがちで、結果が予測と違っていると、「相場が間違っている」と考えてしまいます。人はホモ・サピエンスですから、つまり、自分の予測が間違っていたという事実は、自分が科学的でなかった可能性が高いことを示していますから、心理的に受け入れがたいことなわけです。その結果、どうしても、タイミングを逸してしまうことになります。 テクニカル分析では、そもそも「マーケットに聞こう」としているわけですから、自分が間違っていたという事実に苛まれる必要もないわけです。 訓練された医師は心電図の動きを見て情報を得ることができるわけですが、テクニカル分析も同じで、チャートを見ることで相場の微妙な変化を察知することができます。もちろん、そのためには訓練が必要です。

もうひとつ重要なメリットとして、テクニカル分析そのものが簡単であることがあげられます。外国為替相場に影響のあるファンダメンタルズには200や300の要因があり、それも時間とともに影響度が変化しますから、理解し実践するまでにはかなりの勉強が必要です。一方、テクニカル分析はファンダメンタル分析と比べると効率的に実践が可能です。 また、テクニカル分析は普遍性が高く、効率的です。たとえば、トウモロコシ相場と外国為替相場のファンダメンタルズは、まったく別の勉強をしないといけませんが、テクニカル分析の技法は、基本、ほとんど同じといえます。

私は、もちろん、ファンダメンタル分析を否定するものではありません。しかし、ジム・ロジャーズなどを見ていても、ファンダメンタル分析で当て続けることの大変さを感じます。自分を賢いと思っている人は、ファンダメンタル分析を磨けばよいと思いますが、自分のことを賢くはないかもしれない、あるいは、怠け者だと思っている人は、テクニカル分析を学ぶのが手っ取り早いに違いないのです。テクニカル分析を学ぶことは、相場で儲ける近道だといえると思います。

■テクニカル分析の分類

広義のテクニカル分析は、価格の分析と価格以外の指標の分析にわけられますが、もっともシンプルな定義からもわかる通り、多くは価格を分析します。 価格の分析はトレンド系とオシレーター系に大きくわけられ、さらに、トレンド系は時系列と非時系列(ノンタイム・シリーズの訳です。正確には不規則時系列とでも呼んだほうがいいでしょう)に区分できます。

トレンド系(時系列)の代表はローソク足や移動平均線であり、また、チャートにトレンドラインを引くのは、トレンド系(時系列)の分析をしているということです。一方、オシレーター系の代表はストキャスティクスやRSIです。一般的には、トレンド系は中長期的分析に向いており、その多くは順張り指向で、オシレーター系は短期的分析・逆張り指向と考えられているようです。 もっとも、トレンドは傾向を読むという言葉なのですが、結局は、「変化」の傾向を見ているということで、同類のことを行っていると考えることもできます。 それでは、FX初心者にとって覚えておきたいテクニカル分析を以下で紹介していきましょう。

■ローソク足はテクニカル分析の基本

過去、どのように相場が動いたかを知るのにチャートはとても有効です。ここでは、チャートのなかでも私たちにもっとも馴染みのあるローソク足について解説しましょう。 ローソク足とは、寄付・高値・安値・終値(4本値)の動きを図形で表わしたものです。日足(日足は1日の動きが読みとれるグラフのことをいいます。また、週間の動きが読みとれるグラフは週足、月間の動きが読みとれるグラフを月足といいます)で説明すると、ローソクから上下に伸びているヒゲの上の頂上部分が当該日の高値を示し、もっとも下の部分が当該日の安値を示しています。ローソク足の真ん中の太い部分は実体と呼ばれ、この両端は寄付と終値を示しています。

つまり、1本のローソク足は、一定期間内(1日)における1番極端だった「価格」の両端(高値と安値)と「時間」の両端(寄付と終値)を読み取ることができるのです。 また、始値より終値が高い場合、実体は白色(その場合、陽線と呼びます。白色ではなく、赤色の場合もあります)で、始値より終値が低い場合、実体は黒色(陰線と呼びます)で表わされます。 実体を色別することで、黒いローソク足が続いている場合は相場が下降気味であるなど、イメージしやすくなります。

■4本値のうち、重要なのは終値

4本値のなかで、もっとも重要なのが終値だというのは一般的な認識だと思われます。読者の皆さんが業者に電話で、「昨日、『ドル/円』はいくらだった?」と聞いて、「寄付は……、高値は……」といわれると、時間がないときだと、いらいらするかもしれません。「終値だよ、終値」と怒鳴るかもしれません。 4本値のなかで終値が重要な理由は、終値がその日の最新の、もっとも近い過去のデータであり、また、将来はもっとも近い過去(現在)の延長線上にあるからです。明日のことを考えるのに、明日に一番近い価格から発想をスタートさせるのは当然でしょう。

また、寄付・高値・安値は、その価格を、売り方と買い方の双方のどちらかが容認せずに売買を続けた結果、新しい価格に相場が移行したため、その価格が極端な価格として残ったと考えられますが、終値は、そうではありません。 取引終了の時間がきて、ポジション調整も終わったということは、つまり、売り方と買い方の双方が、とりあえずは現時点で妥当だとした価格でもあるからです。終値は市場参加者が容認した価格だということで、その日1日の値動きを代表していると考えられるわけです。 市場参加者が容認した価格だということこそが、終値が大事な理由でしょう。 だから、終値は値洗いにも使われるのです。

■ローソク足を見るときのポイント

ローソク足を見るときのポイントは、①相場の勢いを読むこと、②時間的推移を読むこと、の2点です。 相場の勢いは、線の長さ(とくに実体の長さ)を見ることでわかります。基本的に、実体の長い線は勢いがあることを示しています。 時間的推移は、高値・安値といった価格から終値に達するまでの買い方と売り方の勢力の推移を見るということです。たとえば、上影がほとんどなく、下影が長く、実体が短いといった、カナヅチのような形状からは、「寄付後、買い方が不利な状態が続き、下落しそうだったが戻った」と読めます。 つまり、下値を試したものの失敗したと考えることができます。

図

ローソク足は、バーチャートよりも直感的かつ視覚的な把握に優れていますが、それゆえに誤ったイメージをもってしまうことに注意が必要です。陰線が3本続くと即座に弱気相場だとイメージしてしまいがちですが、たとえば、陰線が3本右上がりで続いた場合、弱気相場にあるとはいえないことになります。そのような場合は、3本を1本にまとめて考えるといいでしょう。つまり、1本めの寄付から3本めの終値まで仮に1日と考え、1本に合成してみて解釈するのです。 ローソク足の組み合わせについては省略しますが、基本的には、長期の予測には適していないと考えてよいと思います。「被せが出たから」といって、長期ポジションを売るというのは早計でしょう(詳細は、『ラリー・ウィリアムズの相場で儲ける法』を参考にしていただければと思います)。

■年間のハイ&ロー

相場予測には、価格ばかりではなく、時間も大切だと述べました。テクニカル分析でも、長期か短期かという予測期間はポイントです。つまり、データを集めるにしても、明日の相場の予測に、過去1年分の日足データは要らないでしょうし、今後の1年を考えるのであれば、それなりのデータは必要です。 ここで、過去30年以上の「ドル/円」の年間の動きを見てみましょう。予測以前ともいうべき、プリミティブなものですが、テクニカル分析の基本的な考え方・視点をよく示しています。 年初に、過去の動きに、今年はドル上昇の年か下落の年かを考えた後、当てはめて心積もりしておくだけでも、相場での成績は違ってくるでしょう。私は、毎年、右上の表を使って、平均1~5のいずれのパターンの年かを考え、過去の年間のレンジから今年の年間のレンジを推定する際の参考としています。

表は、1977年以来の年間の「ドル/円」相場の記録です。 さて、今年の年初、寄付は92.75円でした。そのレートを使って今年のレンジを想定した結果は次のようになります。 過去は平均で、「ドル/円」は、年初からドル高に9.2%、ドル安にマイナス9.9%動いたということです。2010年も過去の平均的な年と同じ程度に動くと考えれば、92.75円に、9.2%、マイナス9.9%をそれぞれ加減して、ドルの高値101.25円、安値83.57円が計算されます(平均1)。 なお、これは予測ではなく、他の方法で、ドルが過去の平均で動くか、上昇の年(平均2)か、下落の年か(平均3)、等々を自分で判断したうえで、それぞれの比率を当てはめて概数を計算するというもので、自分の相場観と予測の整合性の確認に使うとよいでしょう。自分の相場観に従ってレンジを想定するために用いるわけです。

ついでながら、自分の相場観のチェックに使えるばかりでなく、著名なマーケット・アナリストらの年初のコメントと予想水準に矛盾がないかどうかのチェックにも使えます。たとえば、ドルは「暴落」「大幅上昇」といっておきながら、「100円~85円」などといっていたとすると、珍妙な予測だということです。

■「ドル/円」のアノマリー : 相場反転の月

相場にはアノマリーというものがあります。シーゲルは『株式投資第4版』(日経BP社)の「第18章季節のアノマリー」で、「辞書ではアノマリーという言葉を、当然に期待されるものと矛盾する何かであると定義している。過去のある日、ある週、ある月のデータを基に株価を予想するだけで市場に打ち勝とうとすることほど不自然なことはないだろう。さりながら、何かできそうにも思える。最近の研究によれば、株式が全体として、とりわけある種の株式が市場に勝つと予測できる時期があることが明らかになった」と述べ、株式市場の1月のアノマリー(1月に小型株のリターンが大型株を大幅に上回る)について分析しています。

アノマリーは効率的な市場仮説の反証となるものでもありますが、テクニカル分析とは密接な関係にあります。たとえば、「ドル/円」相場の反転にも季節性が見られるのはアノマリーであり、テクニカル分析の基本的な発想を示しています(ただし、テクニカル・アナリストにも時間の概念のない人が多いのも事実です)。 マーケットの中期的なトレンドを押さえるという意味でも、マーケットの季節性は大事です。たとえば、米国株は「5月に高く、9月と10月に安い」という経験則がよく指摘されます。なかでも10月は「悪魔の潜む10月」といわれ、1929年の大恐慌、87年のブラックマンデー、97年のアジア通貨危機と、いずれも10月かその前後に最安値をつけています(このような季節性が存在する背景は税金と決算だといわれます)。 日本株にも季節性があり、「5月、6月に天井、9月に底」といわれますが、これには、税金や決算という理由は考えにくく、米国株に連れているということでしょうか。このように根拠が見つかりにくいというのもアノマリーの特徴ですが。 外国為替相場では、もっと明確にトレンドが反転しやすい月が存在しています。

図7

1990年~2010年春までの20年間のうち、その月で相場が反転した月を数えると、全体で36回中、1月に9回、4月に7回を数えました(それを比率で示したのが図表7です)。つまり、1月はなんとほぼ2年に1回は天底を形成し、4月も3回に1回は天底を形成しているということです。 このことは行動経済学の視点から考えても興味深いものです。おそらく、1月は新年の始まり(米国の企業やファンド等の新年度)、4月は日本の新年度の始まりで、新しい「時」が到来したために、人間の行動パターンが変わりやすいことも、こうした季節性の背景にあると思われます(ついでながら、テクニカル・アナリストは行動経済学を歓喜して迎えたという経緯があります。経済学での市民権を得られると感じたからでした)。

この季節性を具体的にどのように使うのかというと、たとえば、1月に底入れしたと思うときには、1月下旬から2月にかけて買いポジションをとったり、1~2週間のスイングのポジションは当然のこと、より短めのポジションも買いから入るようにするわけです。このように、天底になりやすい月などということも、知っているのと知らないのとでは大違いです。テクニカル分析の指標とともに、これらも併せてポジションをとるときの参考になるはずです。

■三本抜き新値足

新値足は新値を更新する度につけていくチャートのことです。 広い意味では、かぎ足やP&F(ポイント・アンド・フィギュア)なども含めた非時系列(ノンタイム・シリーズ)の技法のことを新値足と総称することもありますが、新値足が個別の技法を指すこともあります(描き方の違いによって、三本抜き新値足、五本抜き新値足、七本抜き新値足などがあります)。 相場は時間と価格の2つの要素が大事だと述べましたが、価格という要素にのみ注目したのがこれらの新値足です(時間という要素にのみ注目したのが、サイクル分析ということになります。これについても、いずれ本連載で述べたいと思います)。

基本は、時間と価格の両方を分析することは大切ですが、ひとつの要素だけを分析するメリットもあります。 P&Fはすでに使っている人も多いかと思いますし、かぎ足はP&Fとほぼ同じ技法ですから、紙幅の関係で、ここでは省略します。 狭義の新値足のなかでもっとも利用者の多いのが三本抜き新値足です。かぎ足やP&Fと違って、転換に必要な値動きが一定の値幅に固定されていないことが大きな特徴で、非時系列の技法のなかでは、新値足が一押しです。 というのも、大きな動きが続くときは大きな動きでないと認識しないし、相場が煮詰まって小動きになったときには小さな動きでも識別するという特徴があるからです(かぎ足やP&F、三本抜き新値足、五本抜きの比較については、『はじめてのテクニカル分析』を参照ください)。 作成方法は、つけ始めた日の価格(終値)から次の日の価格(終値)が上だと白抜きの棒線を、下落だと黒の棒線を書いていきます。そして、翌々日もその方向が変わらず新値を更新すると、改行して同色の棒線を継ぎ足します。

方向転換は直前の三本の線(三行分)すべてを抜いたときに認識し、それまではチャートにつけません。ただし、つけ始めで、同色の棒線が三本以上ないときは、三本抜いてなくても記入します。また、方向転換後の次の棒線は直前二本(二行分)のいずれかを抜くまで記入できません。 もっとも簡単な見方は陽転と陰転で、上昇に転じれば買いシグナル、下降に転じれば売りシグナルとなります(下落から上昇に転じることを陽転、上昇から下落に転じることを陰転といいます)。 発想としては、一度決まったトレンドはなかなか変わらないとする立場です。

単純な売買のシグナルは前述のように、相場の反転チャートに記入したときですが、騙しを避けるために、転換後、もう一本同色の棒線が記入されるまで待つとよいともいわています。 ダブル・ボトムやダブル・トップもシグナルとなります。買いの場合、一度の陽転ではなく、その後に陰転し再び陽転(ダブル・ボトムを形成)すれば、底を固めたのが明確となるという見方です。 また、騙しを避けるために、三本抜きでなく、五本抜きや七本抜きを用いることもできますが、一般的には反転に必要な本数が多い分だけ売買のシグナルが遅くなってしまいます(ときには三本抜きのほうがシグナルが遅いこともありますが)。 なお、三本抜き新値足くらいは、手書きでつけておくことをお勧めします。ごくわずかな時間で描くことができますし、この技法のいいところでもありますが、何も書き足すことのない日も多くあります。とくに、反転を記入するときなど、明確に反転を意識できることになります。

※今回の図表に関しては、とくに断りのない限り、『決定版株価・為替が読めるチャート分析』(日経ビジネス人文庫)から引用したことをお断りしておきます。
※今回は、さまざまな技法について記述するつもりでしたが、紙幅の関係で果たせませんでした。今後、本連載でも個別の技法について紹介していきたいと考えています。
※本連載に関するご質問・ご感想をお待ちしています。

■チャートを手書きする意味

すべてのチャートを手描きする必要があるとは思いませんが、ひとつくらいは自分の手で罫線を引くというのもお勧めです。手で描くことで、視覚以外の能力が使われるということもあります。 コンピュータで描いたものと、自分の手で描いたチャートとでは、その効果は同じだと思う人がいるかもしれませんが、大間違いです。たとえば、ストキャスティクスやDMIでも、当初の半年くらいは自分で計算してつけてみるべきなのです。そうすることで、その技法のもつ意味がわかり、自分の相場のやり方に微調整を施した使い方もできるようになるからです。

以上のように述べても、実行する人はほとんどいないというのが現実です。どうすれば、実力がつくのかということがわかっていても、実行できる人が多くないのは、相場でも同じです。努力もしないで相場で儲けることができると思っている人がいるのは不思議なことです。

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